読書記録『かめれおん日記』

こんばんは、ねこめです。第五回目は中島敦の『かめれおん日記』です。

タイトル通り、かめれおんの飼育日記……かと思いきや、実はそんなに多く触れられている訳ではないです。(飼っていたのはわずか五日間)

博物教師の主人公が、生徒の一人から譲渡されたかめれおんを飼ってから手放すまでの日常のあれこれ、と言いましょうか。別段何か起こる訳でも、重大なオチがある訳でもなく、ふわっとした物語です。

主人公は病弱で内向的な面があり、様々なことについて自問自答するシーンが散見されます。

俺といふものは、俺が考へてゐる程、俺ではない。俺の代りに習慣や環境やが行動してゐるのだ。之に、遺傳とか、人類といふ生物の一般的習性とかいふことを考へると、俺といふ特殊なものはなくなつて了ひさうだ。之は云ふ迄もないことなのだが、しかし普通沒我的に行動する場合、こんな事を意識してゐる者は無い。所が私のやうに、全力を傾注する仕事をたない人間には、この事が何時も意識されて仕方がない。しまひには何が何やら解らなくなつて來る。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/24443_15509.html

読んでいると、だんだん自分の存在がゲシュタルト崩壊していくような感覚に襲われました。ただ、あくまで想像の範疇なので、そこまで鬱々とした気持ちにはなりません。

また美しい情景描写は、まるで自分がそこに立っているかのような心地で、秋から冬が訪れる時節の空気感を味わうことができます。今の季節に読むにはぴったりの物語です。

青空文庫より『かめれおん日記』中島敦
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