読書記録『キキリツツリ』

こんばんは、ねこめです。あけましておめでとうございます。今年もコツコツ読書を続けていきたいと思います。
さて、第二十三回目は夢野久作の『キキリツツリ』です。(余談ですが一月四日は夢野久作の誕生日でしたね!)

露子さんは継子ままこで、いつもお母さんからいじめられて泣いてばかりいました。
 夜は毎晩おそくまで御飯のあと片付けをしたり、お使いに遣られたりしました。寝る時はまた、お台所のきわの板張りの上に薄い薄い蒲団ふとんを敷いて、たった一人ふるえながら寝なければなりませんでした。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/923_21746.html

主人公の露子は継母からの典型的なイジメを受けている小学四年生の女の子。女学校に這入りたいと両親に相談しても、継母に反対されてしまいます。その夜、辛い気持ちが溢れて床の中で泣いていると、雨戸の真中の方から何やら音が聞こえてくるのです。

「キキリココリ。ククリキキリ。フフリチチリ。リリリツツリ」
 と小さな音が面白く調子よく聞こえて来ます。
 露子さんはそっと起き上って、そっと電気をひねって、音のする方に近寄りました。
 見ると、その雨戸のさんの上に小さい小さい虫が一匹、洋服を着て眼鏡を掛けて、揺れ椅子に腰をかけて書物を読んでいます。今の音は虫が揺れ椅子をゆする音でした。

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このシーンを読んでいて、奇怪な音が聞こえてきた時点でホラーな物語かと身構えたのですが(あまり得意でない)、全然そんなことはありませんでした。
虫さんの服装や物腰から優しいおじいちゃんのような印象を受けます。コワクナイヨ。

「あなたが毎日お母様の云い付けをよく聞いて働いておいでになる事は、私はよく存じています。キキリキキリ、チチリチチリチチリチチリ、いつも御同情申し上げておりますので、一度はお眼にかかってお話したいと考えておりましたが、今度はほんとにい折りで御座いました。ツツリツツリ、キキリキキリ。そこでお尋ねしますが、あなたは最前から寝床の中で泣いておいでになったようですが、何かお困りになったような事はありませぬか」

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手を差し伸べてくれる虫さんの温かい言葉に目頭が熱くなります。
ふと『シンデレラ』を思い浮かべました。シンデレラも継母達からイジメを受けていて、それにも負けずにひたむきに頑張っている……そしてその姿をどこかから見守っていてくれる存在がいるんですよね。

理不尽な仕打ちを受けたり、立ちはだかる壁に絶望感を抱いたとしても、諦めず努力を続けていれば報われるチャンスは巡ってくる。今、何かの目標に向かって頑張っている人へ「どこかに必ずあなたの力になってくれる味方は居る」とエールをくれるような物語でした。

青空文庫より『キキリツツリ』夢野久作
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