読書記録『檸檬』

こんばんは、ねこめです。第二十五回目は梶井基次郎の『檸檬』です。
梶井基次郎の作品を初めて読んだのですが、直感的に「この人、わたしと同類だ」と親近感を覚えました。

えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけていた。焦躁しょうそうと言おうか、嫌悪と言おうか――酒を飲んだあとに宿酔ふつかよいがあるように、酒を毎日飲んでいると宿酔に相当した時期がやって来る。それが来たのだ。これはちょっといけなかった。結果した肺尖はいせんカタルや神経衰弱がいけないのではない。また背を焼くような借金などがいけないのではない。いけないのはその不吉な塊だ。以前私を喜ばせたどんな美しい音楽も、どんな美しい詩の一節も辛抱がならなくなった。蓄音器を聴かせてもらいにわざわざ出かけて行っても、最初の二三小節で不意に立ち上がってしまいたくなる。何かが私を居堪いたたまらずさせるのだ。それで始終私は街から街を浮浪し続けていた。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000074/files/424_19826.html

この鬱っぽいソワソワした気持ち、わかります。目に見えないモヤモヤドロドロした何かが蓄積されていくと〝不吉な塊〟になるんですよね。そんな時は頭の中を空っぽにして、当て所もなくふらふらしたくなります。

何故なぜだかその頃私は見すぼらしくて美しいものに強くひきつけられたのを覚えている。風景にしても壊れかかった街だとか、その街にしてもよそよそしい表通りよりもどこか親しみのある、汚い洗濯物が干してあったりが転がしてあったりむさくるしい部屋がのぞいていたりする裏通りが好きであった。

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わかります、わかります。大好き。わたしは廃墟や路地裏の階段なんかも好きです。

こんな感じでふらふらしながら色んな景色や物を見てまわるお話です。なんだか自分が物語の世界を歩いているようで、いちいち共感してしまう……。

気持ちが沈んでいる人の心にスッと入ってくるので、憂鬱さを感じている方にオススメしたい作品です。ちょっと散歩に出かけるような気持ちで読めると思います。

タイトルになっている〝檸檬〟も作中に出てきます。檸檬は光であり希望であり、憂鬱を吹き飛ばす爆弾であると感じました。気になる方は是非本編を。

青空文庫より『檸檬』梶井基次郎
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