読書記録『風立ちぬ』

こんばんは、ねこめです。第十七回目は堀辰雄の『風立ちぬ』です。
次の詩句が印象深く残る作品ですよね。宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』にも、この小説のエッセンスが盛り込まれていることで有名ではないでしょうか。

風立ちぬ、いざ生きめやも。

https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/4803_14204.html

この物語は、堀辰雄の実体験を元に書かれているそうです。婚約者の節子が重篤な病に侵され、八ヶ岳山麓のサナトリウムにて療養することになります。彼女の最期まで共に寄り添って過ごす姿が描かれており、生きることや幸福について考えさせられるような作品です。

「冬」の章からは日記の体裁になっていて、彼女の死期が迫っていることを予感させるとともに、綴られた心情がよりリアルに感じられます。

また、この作品の不思議なところは、小説でありながら、ひとつの音楽であるように感じられるところです。といっても、音楽に関する物語ではないし、しいて挙げるなら章立ての最初が「序曲」になっている程度で、何か演奏する場面があるわけではありません。
ただ、わたしは読んでいて、人生そのものが組曲になっているように感じました。

それこそ私達を、この上なく幸福にさせてくれるものだと私達が信じているもの、――それは果して私達を本当に満足させ了
おおせるものだろうか? 私達がいま私達の幸福だと思っているものは、私達がそれを信じているよりは、もっと束の間のもの、もっと気まぐれに近いようなものではないだろうか?

https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/4803_14204.html

幸福というものは、想像以上に脆く儚いものなのかもしれません。だからこそ、それを「幸福」と呼ぶような気がしてならないのです。

青空文庫より『風立ちぬ』堀辰雄
https://www.aozora.gr.jp/cards/001030/files/4803_14204.html